AI潤羽るしあ事件

 

 2023/10/14、反AI絵師の「やすゆき」氏が、かつてデザインを担当したVTuber「潤羽るしあ」のLoRA制作者の1人「AI潤羽るしあ(@AI_Rushia)」をTwitter上で晒し上げ、約41.1万人のフォロワーを使ってファンネル攻撃を実行。

 

https://x.com/yasu00kamiki/status/1713004222013477243

 

 「潤羽るしあ」は、かつて存在したホロライブのVTuberで、凄まじい人気を誇りながらも、度重なる不祥事・炎上を起こした事で、最終的に引退・封印されたキャラクターである。

 

 「AI潤羽るしあ」は、やすゆき氏の主張から読み取れるような「悪のAI野郎」というよりは、正真正銘の潤羽るしあのファンで、るしあ本人はもちろん、スタッフの1人に相当するやすゆき氏に対しても、敵対的ではないどころか、むしろ友好的ですらあった。そのため、攻撃に全く抵抗せず、全面降伏のような謝罪文をアップしたうえで、わずか数時間でアカウントを消去した。本件はまるで出来レースのようなスムーズさで、やすゆき氏が「勝利」した。

 

既に消去済み

 

 以降、交渉は水面下のものとなり、結末は不明ながら「これで話は終わった」と思われていたが、10ヶ月後に意外な展開を迎える事になる。

 

note.com

 

 「AI潤羽るしあ」が早々と全面降伏したせいで表面化しなかったが、この話には後々問題になりそうなファクターが多数含まれていた。下記に示す。

 

 

自身の権利を拡大するタイプのガイドラインについて

 

 典型的な二次創作ガイドラインは、「元々違法な行為について、条件を満たせば黙認する」というものだが、やすゆき氏が独自に作成した「生成AIに関するガイドライン」は、「元々合法な行為について、自身の権利を拡大して勝手に制限や罰を加えたもの」となっている。

 

https://kamikire.mystrikingly.com/

 

 「1枚につき1000円×掲載日数分の使用料」「1億円の支払い」「ダウンロード数×100万円の支払いを加算」など、ぼくがかんがえたさいょうの条項としか言いようのない条項が並ぶ。

 

 反AIが流した「多額の使用料を払う羽目になった」というデマもこれが由来だが、イラストレータは神ではないので、書けば何でも通用するというわけではない。

 

https://x.com/tatatataniguthi/status/1713108264278512001

 

 

権利の所在について

 

 潤羽るしあの権利を所有しているのは、やすゆき氏ではなく「カバー株式会社」である。会社の依頼でイラストを描いたに過ぎないイラストレータが、カバー株式会社の意思決定を経ずに独自に晒し上げを行ったわけで、会社側から見るとこれ自体が問題行動である。

 

 また、元々の権利者がカバー株式会社であるから、潤羽るしあのAIイラストが作成されたとして、「やすゆき氏が被害を受けた」とか「権利が侵害された」と言えるかどうかは微妙である。

 

 

「被害」について

 

 非常に重要な事だが、「AI潤羽るしあ」が作ったのは、あくまでも「潤羽るしあLoRA」であって、「やすゆき画風LoRA」ではない。つまり本件はいわゆる「狙い撃ちLoRA」案件ではない。本件においてやすゆき氏は直接的な被害者ではない可能性がある。

 

 また、「広告に使用された」という分かりやすい被害があったビビッドアーミー事件とは異なり、「AI潤羽るしあ」は生成した画像をTwitterにポストしたに過ぎず、それらも全面降伏によって既に全て消去されている。

 

「無断学習」について

 

 やすゆき氏はいわゆる無断学習罪で戦っているが、無断学習罪が存在すると思っているのは反AIだけで、実際にはそのような罪は存在しない。