AI潤羽るしあ事件

 2023/10/14、イラストレータの「やすゆき」氏が、かつてデザインを担当したVTuber「潤羽るしあ」のLoRA制作者の1人「AI潤羽るしあ(AI_Rushia)」をTwitter上で罪人として晒し上げ、約41.1万人のフォロワーを用いて攻撃を実行。僅か数時間でAI_Rushiaがアカウントを消去し、やすゆき氏側が「勝利」した。

 

 典型的な要素がまとまっているので記録する。

 

「無断学習」について

 

 ChatGPTや翻訳AIなど他のGen-AIを見ても分かる通り、機械学習は無断が原則かつ無断でも合法であり、著作権法にはそもそも「無断学習」という概念自体が存在しない(2023/6文化庁見解)。

 

 文化庁は繰り返し「学習と生成を分けて考えて欲しい」と言っているが、無視されている。今回も学習段階では被害が生じておらず、類似物が生成されて初めて被害らしいものが生じているが、イラストレータはあくまでも「無断学習が問題」と主張している。

 

「被害」について

 

 「やすゆき」氏は著名なイラストレータであり、画風LoRAも作成されているので、少なくともエア被害者ではない。

 

 しかし「広告に使用された」という大きな加害行為があったビビッドアーミー事件とは異なり、このLoRAによって生成された類似イラストが、いつどのように使われ、それによってどのような被害を受けたかは判然としない。体調不良アピールは情状にはなるかもしれないが、著作権法とは直接関係がない。

 

自身の権利を拡大するタイプのガイドラインについて

 典型的な二次創作ガイドラインは「元々違法な行為について、条件を満たせば権利を縮小して黙認する」というものだが、このイラストレータが作成した生成AIに関するガイドラインは「元々合法な行為について、自身の権利を勝手に拡大して制限や罰を追加したもの」になっている。

 

権利の所在について

 

 潤羽るしあの権利を所有しているのは「カバー株式会社」である。その依頼でイラストを描いたに過ぎないイラストレータがカバー株式会社の意思決定を経ずに独自に晒し上げを行っている事については疑問が残る。