伊藤園、新パッケージデザインに画像生成AI採用

 2023/8/28、伊藤園が、「お~いお茶」の新パッケージデザインに画像生成AIを使用したと発表。メジャーな画像生成AIではなく、「株式会社プラグがパッケージデザイン用に改良した商品デザイン用の画像生成AIサービス」を使ったとされている。

 

 ただ、同じプレスリリースの中に「本デザインは生成AIの画像を参考にして、イラストやデザインをデザイナーが作り直しています」とも書かれている。反AIリスクを避けようとした結果、AI使用をアピールしたいのか隠したいのかよく分からない中途半端な内容になってしまった。

 

https://www.itoen.co.jp/news/article/55683/

業界団体の見解発表、乱立

 2023/8/24、日本写真家協会(先日声明を出した「日本写真著作権協会」とはまた別の組織)が、最近乱立しつつある「生成AIへの見解発表」を実施。

 

 例によって具体的に何かをするという話ではなく、内容もいつも通り「30条の4を潰せ」。しかし、その文中で「AIが生成したデータは、たとえ最終生成物が何にも似ていなくても、全て翻案に相当し、二次的著作物である」という、まるっきり反AI主義者そのままの先鋭化した独自見解を示す。業界団体の公式発表でここまで先鋭化した見解が出ることは珍しい。もちろん現行法では通用しないし、学習と生成を分離できていないので、文化庁見解とも真っ向から対立している。

 

 先日の手塚憲一事件のような「手描きでトレスする代わりにAIを使ってlow strength i2iした」というケースは、「手塚憲一が意図的にそういう準備をしてそういう指示を出したからそうなった」というだけの事であり、常識的な事例ではない。

 通常のレンダリングにおいては、「特定の原著作物」というものは存在しない。画像生成AIはコピペやコラージュで画像を作っているわけではないので、「この画像を作るにあたって使用した元画像リスト」のようなものを出す事も構造的にできない。

 

URL:

https://www.jps.gr.jp/about-generated-ai-images/

手塚憲一事件

 2023/8/22、漫画家の手塚憲一(桐木憲一)が、8/8頃から、風の谷のナウシカAKIRASLAM DUNK等の著名な作品の公式イラストおよびフィギュア商品画像を、low strength i2iで僅かに改変して公開していたとして炎上。二次創作云々以前にほぼ元絵そのままなので、仮にこれが手描きでも著作権侵害にあたる。

 

 他人の手描きイラストにlow strength i2iを使用して嫌がらせをする人間は、今となっては特に珍しい存在とは言えないのだが、手塚憲一が故・手塚治虫の義理の息子であったこと、手塚憲一自身がプロの漫画家であること、そしてここまで有名な作品の公式イラストにlow strength i2iを使おうとした人間がこれまで存在しなかったこと等から注目を集めた。

 

 その後手塚憲一は一連のTweetを消去、謝罪文らしき怪文書を残して逃走した。

 

 手塚憲一はこれらの絵を手描きだと詐称していないが、AI生成を疑うコメントをブロックで処理したり等はしていたので、それなりに騒がれたくないという意図はあったようである。しかし随所にGen-AI特有の破綻がみられ、修正しようという意思もなかったようなので、全体的に何がしたかったのかよく分からない。

デマの温床Creativity Machine裁判、判決が出る

 2023/8/18、長らくデマの温床となっていた米国のCreativity Machine裁判で判決が下り、それに伴って代表的な反AIデマの1つである「AIで生成した画像には著作権がないので転載・二次利用し放題」が3度目の復活。

 このデマには概ね以下のような問題がある。

 

 ①Stephen ThalerのCreativity Machine裁判は、一般にイメージされるような「AIで生成した画像を登録しようとして拒否された」という事例ではない。「AIそのものを著作権者として登録しようとして拒否された」という非常に特殊な事例である。

 ②出力後の人的な修正が一切ない、いわゆる「ポン出し」だけを議題にしている。

 ③ControlNetすら存在しない時代に発生した事例であり、非常に古い。

 ④2023/6/19に文化庁が「創作意図と創作的寄与があればAI絵にも著作権は認められる」と公式に発表し、この主張を否定している。

 

 この裁判から得られる知見は特にない。

 

URLs:

https://wintermutex.hatenablog.com/entry/demagogue

https://www.theverge.com/2023/8/19/23838458/ai-generated-art-no-copyright-district-court

日本赤十字社、架空の証言をAI生成して討ち死に

赤十字01 

 2023/8/21、日本赤十字社が、「関東大震災 100年前の100人の新証言」なる企画を発表し、自らAI使用をアピール。「当時の状況をよく調べたうえで架空の被災者に架空の被害証言をさせる」という、何となく胡散臭くはあるものの、おそらくAI関係なくこの手の展示には以前からよくあったと思われる内容。被災者の肖像画に画像生成AI、証言のテキストにChatGPTベースのシステムを使用した、とされている。

 

 その後8/24になって企画の中止を発表。理由ははっきりしないが、「証言をAIで生成」という表現が「証言の捏造」という文脈で捉えられ、反AI主義者どころか至って普通の人にまで叩かれまくる事態となっていたため、偉い人が中止命令を出したと考えられる。

 

https://www.jrc.or.jp/chapter/tokyo/news/2023/0824_034995.html

日本の出版・新聞社のほぼ全てが反AI宣言

 2023/8/17、日本雑誌協会日本写真著作権協会日本書籍出版協会日本新聞協会(全て一般社団法人)の4協会が共同で「生成AIに関する共同声明」を発表。

 

 内容は2023/7/24にJASRACが発表したものとほぼ同じ。つまり、具体的に何かをするという話ではなく、これら4協会の基本的なスタンスを示すだけのテキストで、色々書いてあるが要するに「著作権法第30条の4を潰せ」と言っている。

 

 この4協会で日本の出版社の大部分が収まるため、実質的に日本の出版・新聞社のほとんど全てが反AIを宣言した事になる。

 

 2000年代に日本のIT企業がAppleGoogleに完全敗北した頃と似た展開になりつつある。政府が要求に応じるかどうかは不明。

 

URLs:

https://www.pressnet.or.jp/statement/copyright/230817_15114.html

あらいずみるい事件

 2023/8/13、「スレイヤーズ」のキャラクターデザイン等で有名なイラストレータあらいずみるい」氏について、反AIが、これといって証拠がないまま「氏がコミケ102で出した同人誌にAI生成イラストが使用されている」と断定。俗に「魔女狩り」と呼ばれるムーブメントが発生し、反AIの集団があらいずみるい氏に群がり、猛烈な罵詈雑言・誹謗中傷・個人攻撃を浴びせた。

 

 ※誤解のないように一応記載しておくが、仮にこれがAI生成イラストだったとしても、全く問題はない。

 

 しかし、翌8/14になって、あらいずみるい氏本人が原画のレイヤーデータを動画として公開。つまり「AI生成イラストを使用した」という話自体がそもそもデマだった。

 

 前日に猛烈な誹謗中傷を行っていた反AIは、特に謝罪する事もなく、発言やアカウントを消して逃亡。一部の先鋭化した反AIの集団は、「氏はレイヤーデータを偽造して手描きを詐称している」「魔女狩りが起きるのは生成AIが存在するからで、自分たちは悪くない」「魔女狩りされたくなかったら手描きの証拠を付けてイラストを公開するべき」等として誤り自体を認めず、誹謗中傷を継続。元々悪かった反AIのパブリックイメージはさらに悪化した。

 

 反AIがデマと魔女狩りで無関係な人間を焼く可能性は以前から指摘されていたが、それが現実のものとなった。結果として、これが著名な作家に対する魔女狩り事件第1号として記録されている。

 

https://twitter.com/araizumirui/status/1690378747722276864

https://twitter.com/araizumirui/status/1691176628075085824