米国著作権局、人力とAIが混在した作品をリジェクト

「Théâtre D’opéra Spatial」《画像出典:米国著作権局審査委員会の2023年9月5日付け決定書》

 2023/9/5、米国著作権局が、Jason M. AllenがMidjourneyと手描きを併用して作った絵画作品「Theatre D'opera Spatial」の登録をリジェクト。この絵は、AIが関与している事を伏せたうえで8月に開催されたコロラド州のファインアート・コンテストに出展され、優勝した事で話題となっていた。

 

 まず、アメリカは「著作権局に作品を登録しないと著作権が発生しない」という日本とは全く異なるシステムを採用している。逆に言うと「何に著作権を与え、何に与えないか」を著作権局が勝手に決める事ができる。

 

 AI生成と人力が混在した作品に対する米国著作権局と日本の文化庁の見解は以前からバラバラで、日本の文化庁は「人間の創作的寄与があればAI生成物でも著作権を認める」と言っているが、米国著作権局は「人力で作った部分には認めるが、AIが作った部分には認めない」と言っていた。

 

 今回米国著作権局は、Jason M. Allenに対して「どの部分が人力でどの部分がAI生成なのか、報告書を作って提出しろ」と言い、その説明が不十分なのでリジェクトした、としている。しかしこの絵はAI生成部分と手描き部分が完全に一体化していて元々分離できない。結果として現在の米国著作権局のシステムは「完全に手製」と「完全にAI製」の2パターンにしか対応できない事が判明した。

 前述の通り、これは「著作権局が登録を拒否した」だけなので、裁判は行われていない。従ってこの判断が合法か非合法かは現在も不明。

 

 なお、反AI主義者は以前より「AI生成物には一切の著作権が発生しない」というデマを流しているが、これは文化庁の見解とも米国著作権局の見解とも異なる。