ビビットアーミー事件、和解で終了

 2023/11/22、2023/9/4に石恵氏(著名なイラストレータ)とG123.jpの間で発生し、日本における画像生成AI裁判第1号になるのではと期待されていたビビットアーミー事件が、和解で終了した(裁判にならなかった)事を、当事者である石恵氏が報告。和解条件は不明。

 

 裁判にならなかったという事は、法的な判断は行われず、判例もゼロのまま、2023/6の文化庁見解も白黒付かないまま、という事だが、最近増加している「エア被害者がAI学習罪・使用罪を争おうとして具体的な被害を示せず棄却される」ケースとは異なり、トップクラスのイラストレータは「自分のイラストに酷似した最終生成物が実際に存在する」というはっきりした被害があるため、戦って勝つ選択肢も普通にありそうである。

 

https://wintermutex.hatenablog.com/entry/2023/09/06/202942

https://twitter.com/ishi_kei/status/1727260387194859779

ハリウッドのストライキ終了、AI学習罪・使用罪いずれも不成立

 2023/11/8、全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)のストライキが118日で終了。

 

 主要な争点であったストリーミングサービスからの収益配分と最低賃金の引き上げについては、元々の水準がよく分からないので何とも言えないが、一定の成果は出せたようである。

 

 AIに関しては、反AI主義者が期待していたAI学習罪もAI使用罪も成立せず、単に「俳優の名前を出して使う場合は本人の許可を取る」「出演料は本来の額を本人に支払う」という規定ができるに留まった。逆に言うと実在しない架空のエキストラを生成して使う事に制限はない。つまり、この規定は学習する価値のあるとみなされた一部のトップクラスの俳優だけに関係があり、それ以外の人間にはほとんど関係がない。この状況はイラスト業界におけるLoRA被害者とエア被害者の関係に似ている。

 

 どの業界も基本的には「本当に凄い人間だけが残り、それ以外はAIに代替される」という方向に収束していくと思われる。

 

https://www.cbsnews.com/news/sag-aftra-contract-deal-agreement-actors-ai/

アメリカの無断学習訴訟、棄却2件目

 2023/11/21、2023/7から続いていた、アーティストら(Paul Tremblay, Sarah Silverman, Christopher Golden)らによるMeta社(LLaMA)に対する著作権侵害集団訴訟が、正式に棄却。

 同様のケースは2件目。

 

 棄却の理由は前回と同じく「具体的な被害を示せていないから」。

 

 彼らは「無断学習で作られた学習モデルはそれ自体が違法なデータ」「違法な学習モデルから作られた生成物も全て違法なデータ」「無断学習された時点で被害者だから、具体的な被害を示す必要はない」というベタな反AI主義的・AI学習罪的なスタンスで裁判に臨もうとしたが、通用しなかった。

 

https://www.thefashionlaw.com/court-grants-metas-motion-to-dismiss-bulk-of-claims-in-authors-ai-lawsuit/

 

1件目

https://wintermutex.hatenablog.com/entry/2023/10/31/223231

NovelAI3、AI学習罪に燃料を提供

 2023/11/16、NovelAIがv3を公開するが、下記のような過学習を示す最終生成物が大量に発生。

 

 作品名・キャラ名・アーティスト名を指定するとわりとそのまんまの物が出てくる

 「この学習モデルの絵」というものがなく、promptを増やしたり減らしたりするだけで絵柄がコロコロ変わる

 全体的に絵が既存作品の何かに似すぎ

 「Cygames Inc」とか「ブルーアーカイブ」みたいな崩れたロゴがよく出る

 

 伝説の糞AI DeepFloyd IFに次ぐ糞っぷりで、反AI主義者の間ではわざわざロゴ入りの画像を生成してAI叩きの燃料として晒す行為が流行。DeepFloyd IFが全く誰も使ってないにも関わらず未だに反AI主義者に便利に利用されている事を考えると、NovelAI3も当分AI学習罪の燃料として利用される可能性は高い。

 

 なお作品名・キャラ名・アーティスト名を指定しなければだいぶマシになる模様。

EUのAI規制法案、空中分解の危機

 2023/11/10、EUのAI規制法案(EU’s AI Act)が、空中分解の危機に瀕している事が判明。

 

 この規制法案は、「海外ではAI規制が進んでいる」根拠として、長らく反AI出羽守の心の支えとして機能していた。

 

 EUが生成AIの規制に積極的だったのは、ヨーロッパ人が倫理的だったからでも良い人だったからでもなく、主要な生成AIがほぼアメリカ製なので好き放題規制して金を取っても自分らが損しない立場だったからである。しかしその後、ヨーロッパにも有力な生成AI企業が生まれ始めた(文中だとフランスやドイツ)ことにより、彼らも下手にAIを規制すると致命的な周回遅れを起こす立場になった。結果として以前のような保守的な規制案がそのまま通過する見込みはなくなった。

 

https://www.euractiv.com/section/artificial-intelligence/news/eus-ai-act-negotiations-hit-the-brakes-over-foundation-models/

反AI主義者 類型

被害者

 画風LoRAを作られるレベルにある一部のイラストレータ

 自作の絵をlow strength i2iで微妙に改変され公開された人(手塚憲一事件など)

 淫夢ネタを喋らされた岸田首相

 

エア被害者 / AI学習罪

 「学習された時点で被害者」という集団

 法律は無視

 2023年6月の文化庁見解も無視

 漠然と被害者だという意識はあるが、具体的な被害を示す事ができない

 「他人の著作物を勝手に使うな」という主張が手描きの二次創作を直撃

 赤松健が「初~中級者」と呼んだ層

 「無断学習」「58億」「剽窃」「盗用」「泥棒」等の単語が好き

 2023年11月、このスタンスで起こした米国のアーティストの訴訟は棄却された

 全体的にフワフワしすぎ

 

ダブルスタンダード

 「生成AIには反対だがAIには賛成なので反AIではない」とか「悪いAIには反対だが良いAIには賛成なので反AIではない」みたいな言葉遊びをする集団

 結局「全てのAIに反対しているわけではない、画像生成AIだけ反対、翻訳AIは便利に使う」みたいなダブルスタンダードの権化になってしまい、ただの反AI主義者よりたちが悪い

 「反AIなどという物は存在しません」

 中立を自称したがる

 

魔女狩り派 / AI使用罪

 AI使用者を罪人として裁き私刑を実行する事を目的とした反法治主義の集団

 いわゆる「先鋭化した反AI」で真っ先にイメージされる存在

 全ての作品を「100%手作り」と「それ以外」の2種に分類。少しでもAIが関与した作品は「汚物」

 近代的なデジタルツールはどれも中身がAIだらけだが、その話は都合が悪いので無視

 制作過程がはっきりしない作品(大部分はそうである)に積極的にAI使用の嫌疑をかけ、AI不使用を証明できない場合誹謗中傷・罵詈雑言のネットイナゴムーブで私刑を実行。手描きだった場合は黙って帰る

 あらいずみるい事件

 「この世にAIが存在しなければ俺たちはこんな事をしなくて良かったのに」

 

表現規制

 「自分が気に入らない物は地上から消え去るべき」と考える独裁者気質の危険な集団

 法律は無視

 「気に入らない表現を消し去る」事が目的。被害者を減らす事は目的としていない

 そもそも反AI主義者でもないが、AIで生成されたエロ画像に対して従来通り攻撃的であるため、何でもいいから生成AIを叩きたい反AI主義者が尻馬に乗ってはしゃぐケースが多数

 彼らは生成AIだけを選択的に攻撃しようとしているのではない。手描きも攻撃対象である。よって表現規制派の尻馬に乗ってはしゃぐ事は結果的に手描き絵師を攻撃しているのと同義

 

圧縮復元教

 「画像生成AIの学習モデルには元画像が超圧縮されて保存されている」というデマを信仰する集団

 明らかに間違っているが宗教なので修正不能。おそらく死ぬまで同じ事を言い続ける

 「剽窃画像検索復元エンジン」「窃盗コラ排泄ツール」等のぼくのかんがえたさいきょうの造語

 デマベースの活動という点で半ワクチンに類似

反AI活動のリスク、顕在化

ご報告|花邑まい 

 2023/11/4、2020/10から2年間続いていた、イラストレータ「花邑まい」氏がイラストレータ結賀さとる」氏に対して起こした名誉毀損裁判が、「花邑まい」氏側勝訴で結審(賠償金314万円)。

 

 これは「結賀さとる」というイラストレータが、2015年ごろからトレス被害者のポジションを取り、自作の貧弱な証拠を元に「花邑まいにトレスされた」とデマを流して社会的に追い込もうとしたが、2020年に名誉毀損で逆に訴えられ、敗訴したというもの。

 

 生成AIとは直接関係ない話だが、「具体的な被害を示さずに被害者のポジションを取り、違法性の有無に関係なく誹謗中傷・ファンネル・魔女狩りで相手を社会的に潰そうとする」という行動パターンが先鋭化した反AI主義者とほぼ同一なため、一定の影響はあるとみられる。