EU AI Act、AI学習罪・使用罪いずれも不成立

 2023/12/8、EUが、以前から進めていたAI規制法案「EU AI Act」について、大筋で合意を得たと発表。

 

 この法案は反AI主義者の「海外では規制が進んでいる」系ストーリーの筆頭案件で、彼らの中では「無断学習はいずれ世界レベルで規制を受け全面的に禁止される」とか「生成AIはいずれ免許制になり選ばれた人間しか使えなくなる」という事になっていた。実際2023/4頃のEUは「あらゆるAIに学習した全著作物のリストと訓練方法を開示させる」と息巻いており、反AI主義者最大の敵であるStable DiffusionやMidjourneyもその対象に入っていた。

 

 しかし現実はそうならなかった。そもそもEUがAI Actを画策したのは「米国製の強力なAIだけを規制して足を引っ張りつつ、EU圏内のAIは無規制で開発させて米国に追い付く」ためである。その目的を達成できるよう試行錯誤した結果、学習に関する煩雑な事務処理を強制されるレベル3(High Risk)以上に認定されたのは、OpenAIやGoogleが擁する最先端のAIだけに留まり、それ以外の一般的なAIは全てレベル2(Limited Risk)になった。レベル2に対して要求されるのは、生成物にAI使用フラグを付与することだけである。しかもこれは企業がクローズドソースでAIサービスを運営した場合にのみ適用され、個人やオープンソースAIには適用されない。

 

 「無断学習」ことAI学習罪については、言及すらされなかった。EUは「学習する前に必ず許可を取れ」とは言っていないし、「無許可で学習された者は一律で被害者」とも言っていないし、「無断学習モデルを使う奴は泥棒・窃盗犯」とも言っていない。もちろん「言葉には著作権がないので翻訳AIは許されるがイラストは許されない」とも言ってない。

 

https://www.euractiv.com/section/artificial-intelligence/news/ai-act-eu-policymakers-nail-down-rules-on-ai-models-butt-heads-on-law-enforcement/